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へその緒のトラブルについて
臍帯異常の分娩前診断への取り組み

昭和大学病院・産婦人科 長谷川潤一

妊娠・分娩中のトラブルの原因として臍帯と胎盤の異常が占める割合は多く、それらは分娩中の緊急帝王切開分娩や妊娠中の胎児発育不全、死産の原因となることもしばしばあります。

超音波診断

近年、超音波診断機器の発達により、胎児だけでなく多くの臍帯・胎盤異常の診断がし易くなってきています。残念ながら自然に発生する臍帯や胎盤の異常を避ける方法はないため、超音波診断によって妊娠中に、臍帯・胎盤異常のリスクを可能な限り詳しく評価し、ハイリスクとローリスクにふり分けることがまず重要であると考え、その診断や管理に取り組んでいます。妊娠中の早い時期から振り分けを行っておくことは、分娩管理中の異常を予測し準備することで予期せぬ急な帝王切開を回避させることが可能となると考えます。

ここでは比較的頻度が多く、妊娠・分娩管理に影響のある臍帯異常として、臍帯付着部異常(卵膜・辺縁付着、前置血管)、過捻転、頚部巻絡の病態や診断法及びその取扱いについてご紹介したいと思います。

臍帯付着部異常

通常、臍帯は胎盤の中央近くに付着していますが、それが胎盤の端についてしまう異常があります。胎盤の端ギリギリについているものを辺縁付着、胎盤から完全に外にはずれてしまった卵膜に付着するものを卵膜付着と呼びます。

卵膜付着の出現頻度は単胎において1-2%程度で、辺縁付着は3%程度認められます。双胎妊娠においては、それらは各々約10倍の頻度で見られる臍帯異常ですが、出生前に診断されていないこともあり、分娩後の娩出された胎盤で初めて診断されることもよくあります。

辺縁付着はあまり問題となりませんが、卵膜付着は、子宮内胎児発育遅延、早産、胎児心拍数異常、新生児死亡、胎盤早期剥離などと関連することが古くより報告されています。しかし、すべての卵膜付着がトラブルを起こすわけではなく、全く問題を起こさない場合も多くみられます。

さらに、卵膜付着が内子宮口近くに存在するもの(胎児先進部より前)を前置血管といいます。その頻度は2500例に1例と稀なのですが、分娩中の診断は極めて困難であるだけでなく、卵膜血管が内子宮口上にあるため、胎児先進部の圧迫や破水時の血管断裂のリスクが高いのです

。超音波診断があまり普及していなかった頃では、胎児死亡率は未破水症例で50~60%、破水症例では70~100%にも及ぶと言われていました。しかし、最近の調査では、前置血管での児生存率は、分娩前に超音波で診断がされていた症例では97%とされています。

それに対し、診断されていなかった症例では44%であったという報告もあり、分娩前診断の重要性と陣痛発来や破水が起きる前の帝王切開の必要性が強調されています。

卵膜付着の診断は、妊娠の早い時期(20週ぐらい)まではしやすいのですが、後期になると難しくなります。病院によっては20週ぐらいにやる胎児スクリーニングのチェック項目に入っている場合もあり、少しずつは知られているとは思いますが、もっと普及してほしいと思っています。

臍帯過捻転

臍帯にそもそも備わった弾力、らせん構造及び、羊水のこれらは胎児に酸素・栄養を送る命綱である臍帯血流を守るために存在します。臍帯の生理的な捻転は、電話のコードのように可動性を損なわず、牽引や圧迫などの外力から、折れたり、捻れたり、潰されたりすることを防ぎ、それらの臍帯血流への影響を緩和する働きを持っているのです。

一方、生理的な範囲を超えてねじれが強くなってしまった過捻転は、胎児発育不全、胎児死亡、分娩中の胎児の状態悪化、新生児仮死などと関連するといわれます。しかし、実際の予後は、胎児に全く影響を与えない症例から、子宮内胎児死亡の原因となる症例まで多岐に渡るのが現状です。

そのため、現在のところ診断する意義や管理方針には一定の見解がありません。

臍帯頚部巻絡

臍帯巻絡は全分娩の約3割に見られ、部位別では頚部巻絡が8~9割と最も多く、超音波診断でも比較的に見つけやすいものです。一般の人達にも胎児に臍帯巻絡が起こることが良く知られていて、妊婦さんたちの不安材料となることが多いのですが、一回の巻絡では、胎児の状態悪化や遷延分娩のリスクは多少増加しますが、帝王切開の頻度は増加せず必ずしも不利な状態ではないと報告されており、無用に不安を煽らないようにしたいものです。しかし、2回以上の巻絡の場合は、胎児異常をおこす可能性が多少高くなり、巻絡の回数が多いほど分娩時の異常は増加すると言われています。2回以上の巻絡の分娩の際には注意を要すると考えればいいでしょう。臍帯の長さ、巻絡回数、巻絡の強さなどの様々な因子がその予後を左右させるため一元的な予測は難しいのが現状です。

臍帯異常の分娩管理

臍帯圧迫によって胎児心拍数異常(心音がさがるなど)が発生することは古くから報告されています。臍帯異常別に分娩第1期(陣痛開始から全開大まで)と2期(全開大から分娩まで)における一過性徐脈の出現頻度を求めた我々の検討では、卵膜付着、過捻転、頚部巻絡の順に胎児心拍数異常の出現が高いことが分かりました。しかし、臍帯異常のない症例群と比べ、それらの頻度が有意に高かったのは分娩第1期だけだったのです。

分娩直前の分娩第2期においては、臍帯異常のない症例群でも、約半数弱の子宮収縮で胎児心拍数異常を認めており、強い子宮収縮により、臍帯圧迫だけでなく児頭の圧迫や子宮全体の循環不全が生じ、それらが反映されている結果だと考えています。つまり、お産直前では、臍帯異常の有無によらず心拍数異常の頻度は高く、実際に臍帯異常が問題となるのは、まだ陣痛の弱い分娩第1期に多いことがわかりました。卵膜付着では臍帯血管の守られていない部分が存在し、軽い子宮収縮でも臍帯血流に障害を受けやすいこと、過捻転では捻転力に弱い脆弱な部位が存在し、分娩進行に伴い臍帯の牽引、捻転による血流の障害を受けやすいことが推測されました。

そのことから、前置血管など、経腟分娩が極めて危険な症例は分娩開始前に帝王切開を施行しますが、それら以外の臍帯異常の分娩管理においては、急な胎児心拍数異常に対する準備と、分娩の早い時期からの持続的な胎児心拍数の監視が必要であると考えられます。臍帯異常が見つかったからといって予定帝王切開をするのが正しいとは思いませんが、場合によっては分娩誘発による管理分娩も考慮されるべきであると考えています。

一方、超音波検査によって臍帯・胎盤異常が指摘されていない症例において、軽い子宮収縮や分娩1期から一過性徐脈を認める様な場合では、再度超音波検査を施行して臍帯異常などが無いかを確認することも望まれるのではないかと考えています。そのスタンスによって、分娩前に指摘されていなかった臍帯異常を見つけることも出来ると思います。

おわりに

元来より臍帯異常や胎盤異常の超音波診断は難しいだけでなく、異常をきたした場合には急激な増悪を認めることから、時には児を救命し得ない原因となっていました。様々な胎児異常が妊娠中に超音波診断可能となってきた現在においても、絶対的なものはありません。私たちの臍帯異常に関する積極的な取り組みによっても、ことさら妊娠中の突然の死産の予測は未だ困難なものも少なくないと思います。

しかしながら、多くの妊婦さんたちがより良い安全な出産をするためには、超音波機器と胎児心拍数図を合わせた系統立てた妊婦健診と分娩管理が重要なことは間違いありません。今後もそれに関する研究を進め多くの情報発信をしていきたいと考えています。